敷金とは?
読み方: しききん
最終更新: 2026年5月16日 | 出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
定義
敷金とは、賃貸借契約に基づき、賃料の未払いや原状回復費用に充てるために借主が貸主に預ける金銭(保証金)のことです。
詳しく解説
2020年4月施行の改正民法(第622条の2)で、敷金に関するルールが明文化されました。貸主は、賃貸借が終了し部屋の明渡しを受けた時に、敷金から賃料の未払い等を差し引いた残額を返還する義務があります。原状回復費用は敷金から差し引かれますが、通常損耗・経年劣化の費用は差し引くことができません。改正前は敷金の定義自体が法律になく、慣行に委ねられていましたが、改正により返還義務と差引できる範囲が明確になりました。
敷金から差し引けるもの・差し引けないもの
改正民法第622条の2により、敷金から控除できるのは「賃借人が負うべき債務」に限られます。具体的には次のとおりです。
- -差し引ける: 未払い家賃、借主の故意・過失による損耗の修繕費(減価計算後)。
- -差し引けない: 通常損耗・経年変化の修繕費、次の入居者向けのグレードアップ費用。
- -ポイント: 通常損耗まで差し引かれていれば、その分は返還を請求できます。
具体例
- -敷金1ヶ月(8万円)、退去費用2万円 → 6万円が返還
- -敷金2ヶ月、退去費用が敷金以内 → 差額が返還
- -敷金ゼロ物件 → 退去費用は別途請求される
退去費用との関連
退去費用は敷金から差し引かれるのが通常です。退去費用が不当に高額な場合、敷金の返還額が不当に少なくなります。適正な退去費用を確認することで、敷金の正当な返還を受けられます。
「敷金」に関連する条文・判例
本セクションは、裁判所Webサイト・e-Gov法令検索・国土交通省で公開されている一次情報を、本ページのテーマに直接関係する範囲で構造化したものです。判旨の射程・実務的含意は当編集部の解釈であり、個別事案の助言ではありません。
- 法令
識別番号: 平成29年法律第44号(民法の一部を改正する法律)
改正民法第622条の2(2020年4月1日施行)()
当時適用された法令: 民法第622条の2(敷金) / 民法第621条(賃借人の原状回復義務)
敷金の定義と返還ルールを法律で明文化。賃貸借終了後、賃貸物の返還を受けたときに、敷金から賃借人が負う金銭債務を控除した残額を返還する義務がある。
判旨・条文の要点を表示
改正民法第622条の2第1項は、賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、(1)賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、または(2)賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき、敷金の額から賃借人が賃貸人に対して負う金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならないと定める。同条第2項は、賃貸人は、賃借人が賃貸借契約に基づいて生じた金銭債務を履行しないときは、敷金をその弁済に充てることができる旨を定める(賃借人からの充当指定は不可)。改正前は明文がなく、判例・慣行に委ねられていた。
射程の注意: 敷金から控除できるのは「賃借人が負う金銭債務」に限られる。通常損耗・経年変化の修繕費は原状回復義務の対象外(621条)のため、これを控除することはできない。
- 法令
識別番号: 平成29年法律第44号(民法の一部を改正する法律)
改正民法第621条(2020年4月1日施行)()
当時適用された法令: 民法第621条(賃借人の原状回復義務) / 民法第622条の2(敷金)
通常損耗・経年変化は賃借人の原状回復義務に含まれないことを法律で明文化。ガイドラインの考え方が法律レベルに引き上げられた。
判旨・条文の要点を表示
改正民法第621条本文は「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う」と定める。但書で、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは原状回復義務を負わない、とも明示する。これにより、通常損耗・経年変化(経年劣化)は原則として借主負担にできないことが法律で明確化された。
射程の注意: 本条は2020年4月1日以降に締結された賃貸借契約に適用される。それ以前の契約には改正前民法が適用されるが、実務上は判例法理として同様の結論が示されてきた。
- 判例
最高裁 第一小法廷 / 事件番号: 平成21年(受)第1679号
最高裁平成23年3月24日 第一小法廷判決()
当時適用された法令: 消費者契約法第10条 / 民法第1条第2項(信義則)
現行法での対応条文: 改正民法第622条の2(敷金 / 2020年4月施行)
敷引特約は直ちに無効とはならないが、敷引額が高額に過ぎる場合は消費者契約法10条で無効となり得る、とした事例判決。
判旨・条文の要点を表示
賃貸住宅の賃貸借契約における敷引特約(敷金のうち一定額を返還しない旨の特約)が、消費者契約法10条によって無効となるか否かは、敷引金の額、礼金等他の一時金の有無や額、賃料の額、契約期間、賃借人の認識等の事情を総合考慮して判断すべきとした。本件事案では、月額賃料の2倍弱ないし3.5倍強の敷引金額について、当該事案の事情の下では信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとはいえないと結論づけた事例判決である(裁判所Webサイト 裁判要旨)。
敷引特約の有効性判断要素(総合考慮要素(個別判断))
要件 要件の内容 借主側のチェックポイント 1 敷引金の額(賃料との関係)
敷引金が賃料の額と比べて高額に過ぎないか。判例は事案ごとの総合判断としており、一律の倍数閾値を示してはいない。
本件事案では月額賃料の2倍弱ないし3.5倍強の敷引について有効と判断された。これを「○倍以下なら有効」と一般化するのは誤り。事案ごとの個別判断が必要。 2 礼金等他の一時金の有無・額
敷引以外の礼金・更新料等の一時金が同時に課されているか、その合計額。
敷引以外に高額の礼金等が併課されていれば、消費者の負担総額が大きく、無効方向に傾く要素となる。 3 契約期間と賃借人の認識
契約期間の長さに対する敷引額の相当性、および賃借人が契約締結時に敷引特約の存在と内容を認識していたか。
重要事項説明で敷引特約が明示され、賃借人が理解した上で合意していれば、認識面では有効方向に傾く要素となる。 射程の注意: 「家賃の3.5倍を超えると無効」という一律基準を示した判決ではない。当該事案の判断要素として家賃倍数(2倍弱〜3.5倍強)が参照されたに過ぎず、個別事案ごとに総合考慮が必要。一律基準として引用する解説は誤り。
- 法令
識別番号: 平成12年法律第61号
消費者契約法第10条(不当条項の無効)()
当時適用された法令: 消費者契約法第10条 / 民法第1条第2項(信義則)
民法等の任意規定よりも消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効。
判旨・条文の要点を表示
消費者契約法第10条は、(1)消費者の不作為をもって新たな契約申込み等の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項であって、(2)民法第1条第2項に規定する基本原則(信義則)に反して消費者の利益を一方的に害するもの、は無効と定める。退去費用・敷引・原状回復に関する不当な特約はこの条文によって無効とされ得る。
射程の注意: 「賃借人(消費者)」と「賃貸事業者」の関係が消費者契約に該当する場合に適用される。事業用賃貸借には適用されない点に注意。
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