退去費用の相場ガイド【2026年最新】
賃貸物件を退去する際に請求される「退去費用」。金額が妥当なのか判断がつかず、言われるまま支払ってしまう方が少なくありません。退去費用は相場を知っているかどうかだけで、数万円から十数万円の差が生まれます。本記事では、退去費用の決まり方の仕組みから、間取り別・項目別の相場、築年数や地域による違い、そして払いすぎを防ぐチェックポイントまで、退去費用相場の全体像を解説します。
個別の論点をさらに深く知りたい方は、ハウスクリーニング代の相場一覧、クロス張替え費用の6年ルール、状況別のペット飼育・タバコのヤニ汚れ・10年以上の長期入居の各記事もあわせてご覧ください。
退去費用はどうやって決まる?(内訳と決まり方)
退去費用は「ひとつの料金」ではなく、複数の項目の合計です。そして各項目は「貸主負担なのか借主負担なのか」「借主負担なら減価償却後にいくらか」という2段階で金額が決まります。
負担区分の基準になるのが、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。普通に生活して自然に生じる劣化(通常損耗・経年変化)は貸主負担、借主の故意・過失や善管注意義務違反による損耗は借主負担、というのが原則です。詳しくは原状回復とは?借主と貸主の負担範囲を解説で確認できます。
さらに、借主負担の項目であっても、内装材や設備には耐用年数があり、入居年数に応じて借主の負担割合(残存価値)が下がります。つまり「相場の総額」を見るだけでは不十分で、自分の入居年数を踏まえて適正額を見積もる必要があります。
間取り別の退去費用相場はいくら?
退去費用の総額相場は間取りによって大きく異なります。一般的な目安(通常使用・減価償却適用後の借主負担の目安)は以下のとおりです。
| 間取り | 退去費用の総額目安 | 費用の中心 |
|---|---|---|
| 1R/1K | 20,000〜50,000円 | ハウスクリーニング代が大半 |
| 1LDK/2K | 40,000〜80,000円 | クロス面積が増え費用が上昇 |
| 2LDK/3K | 50,000〜120,000円 | クリーニング・クロスとも高額化 |
| 3LDK以上 | 80,000〜180,000円 | 築年数・グレード次第でさらに変動 |
これらはあくまで平均的な目安です。物件の築年数、入居期間、喫煙やペットの有無で大幅に変動します。間取りごとの詳細は費用項目別ページでも確認できます。
各項目の適正価格はどれくらい?
退去費用の明細には複数の項目が含まれます。主な項目の相場(市場相場の単価と、ガイドライン上の負担区分)は以下のとおりです。
| 項目 | 相場の目安 | 負担区分のポイント |
|---|---|---|
| ハウスクリーニング | 1R・1K 25,000〜35,000円 | 特約があれば借主負担。相場超過は交渉余地あり |
| クロス(壁紙)張替え | 800〜1,500円/㎡ | 耐用年数6年。6年以上居住で借主負担はほぼ0円 |
| フローリング補修 | 部分補修 10,000〜30,000円 | 軽微なキズは貸主負担。全面張替えも原則貸主負担 |
| 鍵交換 | 10,000〜25,000円 | 原則貸主負担。特約で借主負担となることあり |
| エアコンクリーニング | 8,000〜15,000円/台 | お掃除機能付きは15,000〜20,000円 |
各項目の単価がこの範囲を大きく超えている場合は、明細の根拠を確認する価値があります。
請求された退去費用が相場と比べて適正かどうか、AIが30秒で診断します。国交省ガイドラインに基づいた参考計算値と比較できます。
無料で退去費用を診断する築年数・入居年数で相場はどう変わる?
退去費用を左右するのは「物件の築年数」よりも「自分が何年住んだか(入居年数)」です。借主負担の項目には減価償却が適用され、入居年数が長いほど残存価値が下がるためです。
クロスを例にすると、耐用年数は6年。入居3年なら借主負担は新品価格の約50%、入居6年以上ならほぼ0%(残存価値1円)です。同じ「クロス全面張替え6万円」の請求でも、入居年数によって適正な負担額はまったく変わります。
年数別の負担割合早見表と計算式はクロス張替え費用の6年ルールと計算方法に、10年以上の長期入居のケースは10年以上住んだ賃貸の退去費用にまとめています。長く住んだ人ほど退去費用は安くなる――これが減価償却の基本です。
都市部と地方の相場差
退去費用の総額は、地域によっても差が出ます。東京・大阪・名古屋などの都市部は、ハウスクリーニングやクロス張替えの施工単価(人件費)が地方より高めになりやすく、同じ間取り・同じ損耗でも総額が上振れする傾向があります。
一方で、ガイドライン上の負担区分の考え方は全国共通です。地域によって「通常損耗が借主負担になる」といったことはありません。都市部で総額が高く見える場合も、上がっているのは単価であって負担区分ではない、という点を押さえておくと交渉がぶれません。地域別の傾向は費用項目別ページのエリア別データも参考になります。
敷金で足りる/足りないの分岐点
退去費用はまず敷金から差し引かれ、足りなければ追加請求、余れば返還されます。「敷金で足りるか」を分けるのは、主に次の3点です。
- 敷金の預入額:家賃1〜2か月分が一般的。敷金ゼロ物件は退去時にまとめて請求されやすい
- 借主の故意・過失による損耗の有無:通常損耗だけなら敷金内に収まりやすい。喫煙・ペット・水回りカビがあると上振れする
- 入居年数:長く住むほど減価償却で借主負担が下がり、敷金内に収まりやすくなる
通常損耗・経年劣化は本来貸主負担です。適正に計算すれば、家賃1か月分の敷金でも収まるケースは珍しくありません。敷金が返ってこない・追加請求された場合の対処は敷金が返ってこない時にやるべきことで解説しています。
相場より高く請求されやすい3つの状況
同じ間取りでも、以下の状況では退去費用が相場を超えやすくなります。いずれも借主の故意・過失(善管注意義務違反)に該当しうるためです。
- 喫煙によるヤニ汚れ:室内喫煙はクロスの変色・臭いを生じさせ、クロス張替えの範囲が広がりやすい。詳細はタバコのヤニ汚れによる退去費用を参照
- ペットの飼育:爪キズ・臭い・粗相の浸透は補修範囲を広げる。猫・犬別の相場はペット飼育の退去費用で解説
- 水回りのカビ放置:結露やカビを放置すると善管注意義務違反とされやすく、浴室・窓まわりの補修費がかさむ
逆に言えば、これらに該当しなければ退去費用が相場を大きく超えることは多くありません。高額請求を受けた場合は、まず「自分にこれらの事情があるか」を確認するのが出発点です。
払いすぎを防ぐ3つのチェックポイント
退去費用の請求書を受け取ったら、以下の3点を必ず確認しましょう。
退去費用 相場チェックリスト
自分の請求書と本記事の相場・負担区分を照合してください。チェック数が多いほど適正額の可能性が高まります。
進捗: 0 / 5 項目(0%)
未チェックの項目(5件)
次に対応する項目: クロス・CF・カーペットの請求に減価償却が反映されている
- 経年劣化(減価償却)が反映されているか:クロスの耐用年数は6年です。6年以上住んでいれば残存価値は1円。全額請求されている場合は減価償却計算ツールで適正額を計算してみましょう。
- 通常損耗まで請求されていないか:家具の設置跡や日照による壁の変色は通常損耗にあたり、原則として貸主負担です。
- 単価が相場の範囲内か:各項目の単価を統計データや本記事の項目別相場表と照らし合わせ、極端に高い項目がないか確認します。
おかしいと感じる項目があった場合の対処は退去費用がおかしい?不当請求の5つのパターン、減額を申し入れる文面は交渉メール・テンプレート集を活用してください。
まとめ
退去費用は、間取り・項目・入居年数・地域・損耗の事情という複数の要素で決まります。総額の相場だけを見るのではなく、「各項目が貸主・借主どちらの負担か」「減価償却後にいくらか」を一つずつ確認することが、払いすぎを防ぐ最大のポイントです。
請求内容に疑問を感じたら、まずは退去交渉ガイドを参考に冷静に対処しましょう。専門サービスの比較検討にはサービス比較ページもご活用ください。
よくある質問
請求された退去費用が適正かどうか、AIが30秒で診断します。国交省ガイドラインに基づいた参考計算値と比較できます。
無料で退去費用を診断する関連法令・公的資料
- 民法第621条(賃借人の原状回復義務)
賃借人の原状回復義務の対象から「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」を除外する条文。退去費用議論の出発点。
- 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省・再改訂版)
退去費用の負担区分の実務上の指針。法的拘束力はないが、改正民法621条や判例と整合し、裁判所も判断の参照基準としている。
- 民法第622条の2(敷金)
賃貸人に敷金返還義務を定める条文。賃料・原状回復費用等の債務超過分は返還が原則。
退去費用相場の判断に直結する判例・実務整理は?
本セクションは、最高裁判所の判決および不動産適正取引推進機構(RETIO)・国土交通省ガイドラインで個別に確認できる判例・実務整理から、本記事のテーマに直接関係するものを抽出して構造化したものです。判旨の要約・実務的含意は当編集部による解釈であり、個別事案の助言ではありません。下級審・ガイドライン解説については、一次情報の判決原文ではなく、公的・準公的機関が公開した解説を出典としています。
最高裁判所第二小法廷判決 / 事件番号: 平成16年(受)第1573号最高裁判例
通常損耗補修特約の明確性要件判決()
適用法条(判決当時): 民法(改正前) / 信義則
現行法での参照: 2020年改正後は民法621条(賃借人の原状回復義務)の解釈指針として参照される。
- 賃借人の主張
- 賃貸借契約書には抽象的な原状回復条項しかなく、通常損耗の補修費用まで借主負担とする特約は成立していない。敷金から差し引かれた通常損耗分は不当利得である。
- 賃貸人の主張
- 契約書および補修費用負担区分表の記載に基づき、借主は通常損耗を含めた原状回復費用を負担する義務がある。
- 裁判所の判断
- 通常損耗の補修費用は本来賃料に含まれているのが原則であり、これを借主負担とする特約が成立するには、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか、または賃借人がその義務負担を明確に認識し合意していることが必要である。本件契約書の抽象的記載のみでは特約は成立していない。
- 実務的含意(当編集部による解釈)
- 「原状回復は借主負担」程度の抽象的な特約条項は、通常損耗まで借主に負担させる根拠にはならない。ハウスクリーニング・クロス補修等の特約有効性を判断する際の判例上の基準として、現在も交渉実務で引用される最重要判例。
裁判所Webサイト 最高裁H17.12.16判決(一次情報: 裁判所Webサイト)
大阪高等裁判所判決 / 事件番号: 平成11年(ネ)第2575号下級審判例(二次解説)
通常損耗の借主負担否定例(高裁)()
適用法条(判決当時): 民法(改正前)
現行法での参照: 2020年改正後は民法621条の解釈に取り込まれている。
- 賃借人の主張
- 通常損耗にあたるクロス・畳の補修費用を全額借主に請求するのは認められない。
- 賃貸人の主張
- 契約上、損耗は借主負担との合意があるため全額借主負担。
- 判旨(RETIO等の二次解説に基づく要約)
- 賃借人の通常の使用方法により生じた損耗・汚損の補修費用は、特約で明確に借主負担とされていない限り賃貸人の負担に属し、抽象的・包括的な原状回復条項を根拠に借主に転嫁することは認められない。
- 実務的含意(当編集部による解釈)
- 高裁レベルでも、通常損耗の補修費用を抽象的特約だけで借主に転嫁することは否定されている。後の最高裁H17.12.16判決と同じ方向の判断。
RETIO 第63号 大阪高裁H12.3.24判決紹介(二次情報: RETIO/国交省等の公的・準公的解説)
国交省ガイドライン+RETIO実務整理 / 事件番号: 国交省ガイドライン別表1関連 / RETIO第77号 等ガイドライン実務整理
1面のキズで全面張替え費用を借主負担にしない実務整理()
参照法令: 民法(改正前)
現行法での参照: 国交省ガイドライン別表1の「クロスは原則1㎡単位(または1面単位)」の運用と整合。
- 賃借人の主張
- 1面のキズに対し色合わせを理由に部屋全体のクロス全面張替えを請求するのは過大。
- 賃貸人の主張
- 色合わせのため全面張替えが必要。
- ガイドライン・実務整理の内容
- 国交省ガイドラインおよびRETIO等の実務整理によれば、クロスの汚損・損傷が一部に限定される場合は原則として損傷箇所を超える範囲の張替え費用は借主負担に含めない、と整理されている(最高裁H17.12.16判決は通常損耗特約の明確性要件を示した別論点だが、抽象的特約による借主転嫁を否定する点でこの実務運用と方向が整合)。
- 実務的含意(当編集部による解釈)
- 1面のキズで6面分全部のクロスを請求されているケースは、過大請求として減額交渉の根拠となる。本整理は国交省ガイドラインの「クロスは1㎡単位・1面単位」の運用と一致。
RETIO 第77号 クロス張替え範囲関連事案解説(二次情報: RETIO/国交省等の公的・準公的解説)